亡き夫への想いをカタチに。大好きな缶コーヒーを石で製作、お墓の磨き直し等のリフォーム。深川市の音江墓地にて

深川・北空知、旭川を中心に、お墓や石材のお仕事をさせていただいております、マル安三上石材の三上です。深川市の音江墓地にて、お墓の再研磨や蝋燭・線香立の作り直し等に加え、石製の缶コーヒーの製作を行いましたので、ご紹介いたします!

 

「亡き夫への想いをカタチに・・・大好きな缶コーヒー」 深川市音江墓地

 

以前に文字彫刻のご依頼をいただいてからお世話になっているお客様より、ご主人様が亡くなったので追加の彫刻をお願いしたいとご連絡いただきました。その時はまだ雪深い時期だったので、「雪が溶けたらやりましょうね」とお話をしていました。暖かくなり、改めてお墓を確認させていただいて彫刻をすることになりました。

 

こちらがご相談のお墓です。ご相談をいただいたのは年末ごろで、確認に伺ったのは4月上旬でした。だいぶ雪が溶けています。彫刻場所の確認のほか、お墓全体の確認や、気になるところを伺いました。新潟県産の草水(くそうず)石で作られたお墓でした。

 

花立と蝋燭・線香立です。蝋燭の火がつきづらく、すぐ消えてしまうので、何か方法がないかということでした。また、奥様はお参りの時にこの部分を動かして納骨室内に空気を入れることがあるそうで、重さがあるので大変だともおっしゃっていました。

 

お墓の土間部分です。表面にたくさんの苔が見られます。水はけが原因のようでしたが、何かのタイミングで苔が付いてしまうと、どうしても年々広がっていってしまいますので、砂利の入れ替えをすることをおすすめしました。

 

お墓本体です。建てられてから数十年の間に付着した水垢や黒ずみが全体に見られました。実は亡くなったご主人様は、ご生前にお墓の汚れを気にされていたそうです。汚れというものは、経年でどうしても発生するもので、同時に磨きやツヤも長年の劣化とともに落ちてきてしまいます。時が経つにつれ段々と水垢が付着しやすくなってくるので、この機会に一度全体に再研磨してみることをご提案しました。

弊社ではただ磨くだけではなく、「グロスチェッカー」というツヤ度を測定できる機械で数値としてお墓のツヤを確認しながら研磨を行う、オリジナルの「ポリシングミックスGC」というシステム化で、本体をきれいにしています。数値は、「20.4%」と出ていますね。きれいに再研磨が終わったお墓であれば、80%後半から90%くらいの数値が出ます。

 

お客様とお話した結果、今回は、
①花立と蝋燭・線香立の交換
②砂利の入れ替え
③墓石の再研磨
④追加彫刻
をお任せいただくことになりました。

また、ご主人様との思い出話を伺って、それをカタチにするご提案もしました。お客様にも承諾いただけたので、再研磨等にあわせてお任せいただきました。

 

作業風景です。研磨し直すお墓本体は取り外して工場へ持ち帰りました。こちらは一番上の棹石で、手前に見える横の面を磨いたところです。てっぺんの香箱加工部分はまだ磨いていないので少し白っぽいですが、それと比べるとずいぶん石目も見えているのが分かります。

再研磨のほか、花立と蝋燭・線香立を工場で新しいものに作り替え、砂利の入れ替えと清掃、追加の彫刻をさせていただきました。

 

リフォームが完成しました!

 

新しい蝋燭・線香立です。もともとあった花立と蝋燭・線香立を三分割にして、花立は元の石を活かして加工・再研磨して設置しました。中央の線香立は、工場に草水石の原石があったので加工して新しく作りました。分割したことで軽くなり、お参りの時に動かすことも楽になりました。ステンレス製で、より防風力が完全な、ステンレス製の箱式タイプです。

 

お墓本体です。もともと草水石は、きれいな桜色の高級石材です。磨き直したことでこんなに艶やかになり、本来の色合いも取り戻しました! グロスチェッカーで測定してみても、「88.7%」という高い数値です。

 

墓誌には、ご主人様のお名前を彫刻しました。そして、その手前に置いてあるのが・・・

 

缶コーヒーです! こちらからご提案した、ご主人様との思い出をカタチにしたものです。

 

奥様はご相談の際、「主人は毎朝、コンビニに行ってスポニチ新聞と缶コーヒーのジョージアを買ってくるのがルーティーンだったんですよ」と話してくださいました。「じゃあ、石の缶コーヒーを作って添えてあげませんか?」とご提案すると、奥様も承諾してくださったので製作することになりました。以前に、亡くなった方が大好きだったビールを作ったこともあったので、そんなお話の流れでご提案させていただきました。写真では、缶コーヒーの形状に加工した石の表面のツヤを出しています。

 

大体の形ができました。ほぼ原寸大です。石は、福島県産の深山吹雪です。色合いが青味があって、いつも飲まれていた銘柄の缶の色にも近いのでは…?「吹雪」という名前も、缶に描かれている雪山のデザインのイメージに合うのでは…?と選びました^^

 

彫りこむためのブラストシートに、手書きでデザインを写しています。

 

転写が終わったら、いよいよ彫刻です。表面に貼ってあったゴムシートをはがすと・・・

 

缶コーヒーの出来上がりです! 上には本物のコーヒーの飲み口部分を切り取って、ボンドで貼り付けました。

 

本物の缶コーヒーをお墓に置いたままにすると、錆がお墓についたりしてお墓が傷む原因になってしまうこともありますが、これなら安心です。お客様は、「そういうこともできるんだと感激しました!」とおっしゃって喜んでくださいました。ご納骨のお手伝いもさせていただいたのですが、集まってくださったご家族の皆様は、「すごいね!」とびっくりされていました^^ 帰りにはお菓子までいただいて、ありがとうございました。この石の缶コーヒーを見て、生前のご主人様のことを思い出し、皆様で偲んでいただけるとうれしい限りです。

「これしか飲まないんですよ」と話す奥様の様子に、なんとかその思い出をカタチにできないかとご提案しましたが、こうしたちょっとしたことで亡くなった方への愛情や、ご供養の気持ちをカタチにすることもできます。ですがこれは、石屋から提案がなければ思いつかないことではないでしょうか? 残されたご家族のお気持ちに寄り添って、石という素材を通してそれをカタチにする・・・。石のもつ素晴らしいパワーを感じるお仕事でした。